*Supplementary lessons*
「…あつ」
「言うな、余計に暑くなる」
「だって…、暑」
「今度暑いって言ったら罰金」
「う…、だって、全然解んないし、なんか喋ってないと、暑くて気が狂いそうなんだもん」
夏休み中の誰も居ない教室のうだるような暑さのなか、期末考査で赤点だったあたしは、先生から出された問題集を目の前に口を尖らせる。
「ほら、また…、今度は口塞ぐぞ?それに、補習は自分のせいだろ?」
「…自分だって」
「俺は怪我して試験受けらんなかったの」
……知ってる。
いつも彼の事見てたから…
サッカー部の彼は、地区予選の試合中に足を怪我してしまったのだ。
「あーあ…、思いっきり走りてー」
全国大会に向け、グラウンドで練習しているサッカー部に視線を移し、窓の外を見つめる彼の右足はギプスで固定されていた。
あたしはそんな彼に何も言う事が出来ずに言葉に詰まった。
「で?どこが解んねーの?」
彼はグラウンドからあたしに視線を移し、そう聞いてきて、あたしはプリント片手に立ち上がると、彼の座る席の前の席へと移動した。
「……この辺、全部…」
「はあ?全部って、まだ全然解いてないじゃん」
「全部解んないんだもん」
「………、いいか?説明するから、よく聞いてろよ?」
丁寧に説明してくれる彼の伏せた睫毛が凄く長くて、じっとそれを見つめていると。
「……で…、こうなる。解った?」
「へ?」
いきなり上を向く彼と目が合って、褐色の瞳があたしを捉えた。
「お前……、聞いてた?」
「う、うん」
「じゃ、解いて」
「………う」
「やっぱ聞いてないじゃん」
彼に見とれて聞いてなかったなんて言えなくて、あたしは慌てて。
「あっ、暑くて頭に入んなかったの!」
「言ったな」
彼は手を伸ばし、あたしの後頭部を掴むとぐいっと引き寄せた。
あたしの唇を塞ぐ彼の唇。
彼の唇がゆっくり離れると。
「………暑い」
「まだ言うか」
彼は笑うと、今度は優しくあたしの唇を塞さいだ。
*end*

