*Soybean Bar*
「……お腹空いた…」
「コレでも食ってろ」
そう言って課長が私のデスクに投げてきたのは大豆バー。
「こんなんじゃ全然足りませんよ…」
ぼやきつつも袋を開けて大豆バーにかぶり付く。
「もう少しだ、メシ奢ってやるから、頑張れ」
「高級フレンチフルコースでお願いします」
「はいはい。分かった分かった…」
誰も居ない広々としたオフィスの就業時刻は、4時間前にとっくに終わってしまっていて。
年度末で残業がここ数日続いていたけど、課長と二人きりで過ごすのも多分今日で最後。
「韓国料理も捨てがたいな…チャプチェ食べたい…あぁ、焼肉もいいかも……」
「なんでも好きなモン食わしてやるから。ほら。コレで最後だ…」
課長が書類をヒラヒラとさせるから、立ち上がりそれを取りに行く。
「当たり前です。週末にこんなに遅くまで女の子に残業させて…」
「どうせ彼氏居ねーんだろ?」
「………悪かったですね」
課長から書類をパシッと奪い、再びデスクに戻る。
全く。
人の気も知らないで。
コレでも欠講モテるんだから、私……
誰のおかげで彼氏が出来ないと思ってるの?
課長の事が好きだからに決まってるじゃない。
だからこんなに何日も残業に付き合ってるのに……
いつものようにチャラけた口調の課長は、そんなに私の心中なんか知りもしないんだろうな……
ため息をひとつついて、デスクに戻り、最後の書類をPCに打ち込んでいく。
「終わっ…、たー」
両手をあげて伸びをする。
「おー。お疲れ、よしっ。メシ行くぞ」
エンターキーを押し、シヤットダウンして、課長と二人オフィスを出る。
「寒っ…」
春とは言え、夜の寒さは今だ真冬のようで。
「ほら、羽織ってろ」
そう言って私の肩に自分が着ていたジャケットを掛けてくれる課長。
「………足りません」
私がそう言うと、課長は私の肩を掴んでギュッと自分に引き寄せた。
「……まだ、足りないか?」
「…そんな事して…、誤解しちゃいますよ?」
「ハハッ。責任は取るよ」
*end*

