*Previous night*
後は寝るだけなのに、ベッドの電気スタンドのほのかな明かりの中、ひとりアルバムを捲りながら、眠れぬ夜を過ごしていた。
「……ははは」
昔を思い出し、時折こぼれる笑い。
初めて海水浴に連れて行った時、海水がしょっぱくて、よほど驚いたのか、大泣きしてたっけ?
保育園のお遊戯会。
お姫様の格好をして、歩いてステージの袖から出てきた時、自分でドレスの裾を踏んづけて、顔から転んでしまった時も大泣きで。
花火大会に行った時は、打ち上げられる轟音に怯えて、泣きながら俺にギュッとしがみついてきて、花火なんかひとつも見てなくて。
夜中に枕を抱えて、怖い夢を見たって泣きながら俺の部屋によく来てたな。
本音に、よく泣く子だった……
−−−コンコン…
不意に寝室のドアをノックする音がして。
「……お父さん、起きてる?」
「ん?起きてるよ?どうした?」
産まれてから25年。
昔と変わらぬ面影を残す娘が枕を抱えて寝室に入ってきて。
「今夜……、一緒に寝てもいい?」
「………別に構わないけど、どうした?急に?」
「…この家で過ごすのも今夜で最後だから……、小さい頃みたいに、お父さんと一緒に寝たいの」
俺が体をずらすと、娘はその横に潜り込んできて。
「お父さん……、一人にしてごめんね?」
「はは…、やっと我が儘娘から解放されるんだ、一人になって清々するよ、でも、お前ももう嫁ぐんだし、向こうに行ったら、我が儘ばかり言ったら駄目だぞ?」
「うん。わかってる……」
「……また泣いて…、そんなに泣いてたら顔が腫れて、明日の結婚式は台無しだぞ?」
まだ娘が幼い頃、母親が亡くなって、男手ひとつで今まで大切にしてきた最愛の娘が。
明日、俺の手元から去ってしまう。
「お父さん……、今まで、ありがとう…」
「……幸せに…、なるんだぞ?」
二人寄り添って、泣きながら眠りに着く。
明日の結婚式は、親子で酷い顔をしているに違いないな。
*end*

