*Misapprehension*
俺はあいつが嫌いだ。
授業中、あいつとよく目が合うんだけど、あいつはそれに気付くと、音がしそうなほど激しく顔を反らす。
こないだも、下駄箱で上履きと履き替えていたら、よろけてしまって、たまたま隣に居たあいつの肩に掴まりそれを回避。
「あ…、わり…」
ちゃんと謝ったのに、あいつは俺を突き飛ばし、何も言わずに走り去ってしまった。
俺はあいつに嫌われてる。
だから俺もあいつが嫌い。
あいつが知らない男に笑いかけていたりすると、無性に腹が立つ。
俺には笑った顔なんか見せないクセに、他の奴にはそんな顔して見せるんだ?
そんな楽しそうに笑ってんじゃねぇよ。
何でだよ?
俺には笑ってくれなくて、いっつも俯き顔ばかりで。
あいつがが笑ってくれたら、俺だって笑ってやるのに。
他の男にそんな顔見せてんじゃねぇよ。
嫌いだから、きっとこんなに腹が立つんだ。
ホント……、腹が立つ。
「ちょっと」
廊下を歩いていたら、後ろから声かけられて、振り向いたらあいつが立ってた。
「…………………………。
何?」
普段はあいつは俺から目を反らすから、たっぷりの沈黙の後にそう答えた。
だってあいつが俺の事を見てるから。
「……先生が、呼んでたよ?」
「は?」
何の用事かと思ったら、そんな事か………
「じゃ」
「ちょっと待って」
踵を反すあいつの腕を掴んで俺はあいつを引き止めた。
「何?」
「お前さ?……、俺の事…、嫌いだろ?、」
「なっ…、何言って!そっ、そんな事!」
「そんな事?」
するとあいつは途端に真っ赤になって、俺の腕を振りほどき、走り去ってしまった。
そんな事。
その続きがどうしても聞きたくて、俺はあいつの後を追って走り出していた。
*end*

