*Elevator 1*
「あ。どうも、こんばんは」
「あ…、こ、こんばんは…」
週末の自宅マンションのエレベーター。
お風呂に入って素っぴんだけど、どうしても急激にプリンが食べたくなって、お財布だけ持って部屋を出た事を今さら後悔しても仕方ない。
開いたエレベーターの中にはよく一緒になる、恐らく上の階の住人。
私は慌てて俯き、エレベーターに乗り込んだ。
「買い物ですか?」
「あ…、はい、どうしても急にプリンが食べたくなって…」
「ははは、俺も同じです。さっきテレビでラーメン食べてる番組やってて、俺も今からコンビニに行く所です」
「あはは、そうなんですかー」
たまにこんな風に会話する、ちょっとカッコいい彼の事が最近気になり始めた私は、せめて眉くらいは書いてくるんだった、と悔やんでも悔やみきれない。
−−ガタン!
「ひゃっ!」
「おっ?!」
急にエレベーター内に軽い衝撃が走ったかと思うと、フッと箱の中が暗闇に包まれて、ピタリと動きを止めてしまった。
「ななな、なにコレ?…故障?ですかね?
「多分、停電だと思います」
真っ暗闇の中、急に不安になった私は辺りを手探りで動き始めた。
確か非常用のインターホンがあった筈。
でもどこにあるんだろ?
壁に手をつきあちこち触っていると、彼の身体に触れてしまって。
「怖い、ですか?」
「……少しだけ…、暗いの苦手なんです…」
「手、震えてますね?」
彼は身体に触れている私の手を取り、彼の掌に私の掌がすっぽり収まる感触。
「大丈夫ですよ。直ぐに動き出します」
「……そ…、そうですか?」
「しりとり、でもしますか?」
「しりとり?」
「はい。じゃ、俺から…、付き合ってください」
「………は?」
「次…、どうぞ?『い』からですよ?」
「い?…いいですよ?」
「よろしくお願いします」
「す……、好きです」
「素っぴん可愛い……」
次の瞬間パッと明るくなって。
エレベーターが開くと、二人手を繋いでコンビニまで歩いて行った。
*end*

