*New environment*
「よいっ、しょっと、ふぅ。重い…」
オバサンみたいな呟きを洩らしながら、大きな段ボールを抱えて、もう何度目かになるかわからない階段の往復に、腕と腰が悲鳴をあげていた。
三階建てのアパートの二階。
大学生としてスタートする新生活のあたしのお城。
初めての一人暮らし。
勉強も頑張らないと。
サークルにも入ってみたい。
バイトも探さないとな。
合コン…、とかにもぜひ参加してみたい。
きっと素敵な出会いが待っている筈。
コレを運べば最後だ!
頑張れ!あたし!
新生活に期待を馳せながら自分を奮い立たせて、再び階段を上がりかけていたら、手から段ボールが滑り落ちそうになって、慌て掴み直そうとしたら、ガクンと階段から足を踏み外してしまい。
「っ!ひゃあぁっ!」
落ちるっ!!
転げ落ちるーーっ!!!
衝撃に備えて無意識に固く目を閉じた。
……………あれ?
落ちてない?
「危ないなー。大丈夫?俺が居なかったら君、ヤバかったよ?」
耳元から声が聞こえて、おそるおそる振り向いてみたら。
段ボールごとあたしを後ろから抱き止めてくれている、もろタイプのイケメン。
「何それ?運ぶの?」
あたしから段ボールをヒョイと奪うと、イケメンはそれを軽々と肩に担いで階段を登り始めた。
「部屋、どこ?」
「……あっ…、205ですっ」
「205?俺の隣じゃん」
「へっ?」
「よろしくね?お隣さん?」
イケメンは肩越しに振り返り、ニッと白い歯を覗かせてあたしに笑ってみせた。
早速素敵な出会いが起こってしまった。
今日からのあたしの新生活はここからがスタートだ。
イケメンの後に続いてあたしは階段を駆け上がった
*end*

