*Lovers 2*
「こんばんわ−♪」
2週間振りに彼女はやって来た。
今日はやたらと上機嫌で、いつものカウンターの席に腰を落ち着かせた。
つまり俺の目の前。
「今日は随分ご機嫌だね?」
彼女の前におしぼりとコースターを置きながらそう聞いてみた。
「うん。ライブ行ってきた」
若干興奮気味に話す彼女は既にある程度酔っているらしく、頬はピンクに染まっていて、色素の薄い琥珀色の瞳は濡れたように潤んでいた。
彼女がこの店に来るようになったのは約一年前くらいから。
週末ドアが開く度に彼女が来たんじゃないかと、毎回心待ちにしている自分に気付くのはそんなに時間がかからなかった。
「ライブ?ひとりで?」
「どうせひとりだよ−だ」
そう言って口を尖らせると彼女は、コースターの上にいつものパラライカを置くと、クイッと一気に飲み干した。
何気ない会話のやり取りで、毎回彼女にオトコが出来たりしていないか確認する俺。
この店は【客には絶対手を出すな】と言う、オキテがある。
なんか知らないけど、過去にそれでイザコザがあったらしい。
全く。迷惑な話だ。
そんな訳で、いまだ彼女のアドレスすら知らず、ただ彼女を待つだけの日々。
いっそ辞めちまおうか?
なんて思った事もあったけど、辞めてしまって彼女にゴメンナイなんてされたら、仕事も無し女も無し。
たったひとりの女の為にそこまでやれる若さは、残念だがアラサー前の俺には無い。
「でも…、ひとりはさみしーな」
ポツリと呟いた彼女のその一言に、俺の若さが復活したのは言うまでも無い。
ははは。
結局俺は単純なのだ。
「……俺の、彼女になる?」
ダメ元で言ってみた。
彼女にしちまえば誰にも何も言われないだろ?
「うん。なる」
まさかの速答。
「……今夜、うち、来る?」
「うん。行く」
*end*

