*short.short*



*38.9゚C*



暑くて喉が渇いてるんだけど、冷蔵庫には何も無い。


汗だくて着替えたいんだけど、身体がダルくて動けない。


寝てるだけじゃ退屈なんだけど、頭が痛くてそれ所じゃない。


−−ピピピ…


脇に挟んだ体温計が鳴って、見てみると、38.9゚C


さっき計った時より上がってる。


これはヤバい。
昨日の晩のバイト帰りに雨に濡れたのがマズかったのか……


病院に行こうにも生憎今日は休日。
平日だったとしても、キツくて動けそうに無いけどね?


せめて誰か水をくれ!
喉が渇いて死にそうだ!
誰でもいいから、俺を助けてくれ!


必死に心の中で叫んでも、誰に届く筈もなくて……


「……もうダメだ…」


呟きさえ荒い吐息にかき消された。


……ピンポ−ン…


狭いワンルームにインターホンが鳴り響くけれど、こんな状態で出れる筈もなく。


「ちょっと!開けなさいよ!居るんでしょ?」


−−バンバンバン!


乱暴にドアを叩く音がしたかと思うと、次に枕元に置いていた携帯が鳴り出した。


電話に出ると。


「中に居るよね?取り合えず開けて」


ベッドから転げ落ち、ずりずりと玄関へ、たっぷりと時間をかけて這って行く。


なんとか鍵を開けるとバンッとドアが開き、外に倒れ込みそうになった俺を支えてくれたのは。


「ちょっとっ、大丈夫っ?」


同じバイト先の女の子。


「死ぬ。って一言だけメール送ってくるなんて、イタズラかと思ったじゃない」

「………死ぬ…」

「わかったわかった、上がるわよ?」


彼女は俺をよいしょと抱えると、ベッドの上に放り投げた。


「……もっと、優しく…」

「はあ?うるさいわよ。来てやっただけでもありがたく思え」


せかせかと彼女は予想していたのか、スポーツドリンクや食べ物や薬を袋から出すと、死にかけていた俺を見事復活させてくれて。


「全く…、この寒空に、雨に濡れて帰るからよ…」


ブツブツと文句を言う彼女に俺は。


「お礼にチューしてやろうか?」

「風邪が…、治ったらね」



……ですよねー。


*end*