*short.short*



*Flower 2*



僕の仕事は花屋。


毎日大好きな沢山の花達に囲まれて、それなりにお客様にも恵まれて、ささやかだけれど、安定した生活が送れている。


僕は午後7時に薔薇の花束を作って、ある所に届けるのが毎日の日課。


ある所とは、政治家や大物芸能人がなんかがよく利用する、超が付く程の高級クラブ。


毎日薔薇を贈られるその人は、その高級クラブに勤めるホステスさん。


薔薇より綺麗で艶やかなその人を初めて見た時は、一瞬息が止まるんじゃないかって思った。


僕なんかじゃ客として入ることすら出来ないそのグラブに、毎日高級な薔薇を贈られる程、その人にはお金持ちな顧客様が居るんだろうな。


花束を渡す時に、軽く触れあう指先。


受け取る時に綺麗な顔を一瞬幼くさせて、ふわりと優しく微笑むその人に、僕は密かに恋してる。


毎日同じやり取りで、名前さえ知らないその人への想いは日々募るばかりで、胸が苦しくなってしまう。


僕には毎日こんな高級な贈り物なんて出来ないし、勿論客として行くなんて事も無理だから。


毎日その人の笑顔を見るために、僕は花束を届けるだけ。


ため息をひとつついて、今日も花束を届けに店を出ようとしたら、ふと視線の先にポプリの小袋が目に入ってきて。


これくらいなら毎日僕にでも贈る事が出来るかな?


なんて。


そんな勇気も無いくせに、それにその人にはこんな安物よりも、ゴージャスな薔薇の方が似合ってる。


でも。
もし受け取ってくれたら?


そんな事ある訳無いけど、僕はポプリをひとつ摘まんでエプロンのポケットに忍ばせた。


「お届け物です」

「いつもありがとう、ご苦労様」


いつものやり取り。
勿論ポプリも渡せる筈もなく、僕はその人に背を向けた。


チキンな僕。


「あっ…、あのっ」


背中からその人の声がして肩越しに振り向くと、その人は僕の目の前に来て。


見てみるとその人は僕が知る限りでいちばん可愛く笑ったんだ。


僕は勇気を出してポケットからポプリを取り出した。



*end*