*short.short*



*Flower 1*



「もういい加減に、俺の所に来い」


貴方は最近そればかり。


確かにもう若くはない。
三年間もずっとNo.1でいられたのも、全部貴方のお陰。


貴方は誰もが知っている有名な脚本家。


貴方の所に行けば何不自由無く、好きな事をやらせてくれて、夜の世界から綺麗に抜け出させてくれるってわかってる。


沢山のプレゼントも貰ったわ。


でも一番プレゼントは、貴方が毎日私宛にお店に届けてくれる薔薇の花束。


薔薇が特別好きな訳ではないけれど。


「お届け物です」


そう言って私に毎日その花束を届けてくれる花屋の彼。


彼から花束を受け取る為に私はいまだこの世界に居るの。


「いつもありがとう、ご苦労様」


毎日たったこれだけの会話。


彼は私に花束を渡すと人懐こい笑顔を見せて、私に微笑んでくれる。


話しかけたいけれど、私みたいな女には、彼のお日様みたいに暖かい笑顔が眩しすぎて。


貴方には悪いけれど、貴方の事を利用して、毎日彼の笑顔に会う為に、私は貴方の申し出を受け入れる事が出来ないの。


彼はいつものように花束を渡すと、私に背を向けお店を出ていく。


もう……、行ってしまうの?
…待って、もう少し……


「あっ…、あのっ」


まだ行って欲しくなくて、私は彼を初めて呼び止めてしまって、彼は肩越しに私の方を振り向いた。


どうしよう、なんて言えば……。


考えながら彼の前まで行き、取り合えず彼がその場に留まって、変わらぬ笑顔を私に向けてくれたから、私も同じように笑って見せた。


彼はエプロンのポケットから何かを取り出し私に差し出してくれて。


「これ…、よかったら、貰って下さい」


見るとそれは可愛くラッピングされたポプリの小袋。


どんな高級なプレゼントよりも。

沢山の薔薇の花束よりも。

そのポプリの小袋の方が何千倍も嬉しい。


「ありがとう。凄く、嬉しい」


少し震える声で私は彼の手からポプリを受け取った。



*end*