「――お世話になりましたっ!」
私はそれだけ言って、お店を飛び出す。
月明かりが私を照らすこてさえ疎くて、いやになる。
――逃げてきたのに、
なんで、追いかけてくるのよ。
ただ、闇雲に走った。
「!」
体が軽くなり、魔法が解除されたことを知る。
より一層スピードをあげる。
チラホラと歩く街の人たちがこっちを驚いたように見ている。
当たり前だけど。
こんな色、街では見かけないもの。
「――」
遠くから聞こえてくる声、
強く、惹き付けられる。
けど、振りかえからない。
ただ、前だけを見るの。
横からのびてきた手を咄嗟に避けようと、身を縮めると、
―――ガクン、と膝をつく。
「おいっ、こんなとこに王族がいるぞ!」
意味深な含みを持たせた嬉々とした声色が私にふれる。
「イヤッ!」
振り払おうと手を振る。
が、逆に掴まれてニタリ、とまた気味悪く笑われる。
だから、思わず………
「夜闇輪廻」
―――あぁあああぁああ!!!
穴に、落としてしまった。
穴って言っても、ただの穴ではない、輪廻の穴に。


