お兄ちゃんの空



「ウソよ!よだれまではなかったわよ。気持ちよさそうに寝てたのは本当だけど…」



ケラケラと綾音を指差して笑う沙也香。


「なっ。なんで嘘つくのよ、沙也香!」


そんな沙也香を、綾音はキッと睨みつけた。



「だって綾音かわいいんだもん、からかったら」

「それはない!それはぜったいないからね!?」

綾音は首を必死に横に振り、沙也香の言葉を否定する。


綾音は、昔からその言葉がきらいだった。


かわいい、なんて、自分には不似合いだと思っているからだ。