綾音は、無我夢中で走った。
外周で疲れ果てていたが、そんなことよりも早くあの場から消えたかった。
どれくらいだろうか、それは、五分にも一時間にも感じられた。
その間綾音は、いろいろなことを考えていた。
まず、先輩のことば。
次に、沙也香がなにもいってくれなかったこと。
綾音は、桜先輩たちに悪口をいわれたことは、悲しかった。
だけれど、沙也香がなにもいってくれなかったことのほうがよっぽど悲しかった。
「沙也香…どうして」
なにもいってくれないの、とつぶやく。
同時に綾音はたちどまり、空を見上げた。
星がきらきら光り、きれいな夜空。
「はは、なんで…なんで、なんで」
どうして、と。
「あたしだって…がんばってるのに!」
「どうしたの?」
綾音は、いきなり話しかけられて驚き、声のしたほうを振り向いた。
