同時に、綾音は沙也香は何をしているのか気になった。
沙也香も荷物は部室においてあるのだし、部室にいるはずだからだ。
綾音は、窓から部室の中の様子をのぞいた。
すると、まだ先輩達は綾音の悪口を言っているらしく、その声がきこえてきた。
ただ、その姿は見えない。
綾音は、ぐうぜん沙也香の姿をみつけることができた。
沙也香は、先輩たちの悪口に同調こそしていなかったが、知らないふりをしていた。
聞こえていないのか、と思ったが、それはありえない。
綾音の位置からでも聞こえているのだから、聞こえているはずだ。
綾音は、沙也香なら先輩たちに何か言ってくれると思っていたから、少し傷ついた。
そして、先輩たちがより大きな声で言った。
「綾音、邪魔だよねぇ!消えればいいのにぃ〜」
といい、キャハハハ、と笑いだした。
綾音は、抑えていた涙があふれだしていることに気づいた。
そして、涙を右手でぬぐい、唇をかんだ。
「絶対…泣かないんだから」
綾音がいったとたん、誰かが綾音のいる窓に近づいてきた。
綾音はそれに気づくと、走ってその場から逃げ出した。
