お兄ちゃんの空



「いくしか…ないわね」

はあ、とため息をひとつつき、沙也香が急に走り出した。


「やだ、まってよ沙也香!」


綾音が手をのばして沙也香に追いつこうとすると、沙也香はニヤリと笑って、ピッチをあげた。



「追いつけるものなら、追いついてみなさい!」


それだけ言って、はるか先の方へ走り去っていってしまった。



なんだかんだいいながら、沙也香は足が速い上に体力もそれなりにある。


10周はきついにしても、5周は余裕なはずだ。


運動神経の悪い、綾音に追いつけるはずもなく…


綾音はその場にへたりこんだ。


「10周…マイペースにいこうっと」



それだけつぶやいて、綾音は走り出した。