「新堂さん!」
「・・・おう、お疲れ」
あたしはライブを終え、待ってくれていた新堂さんのもとに駆け寄る。
小走りで走るあたしを待っていてくれる人は、もうミナトじゃない・・・。
そんな思いが脳裏によぎる。
そのせいでか、あたしの足はスピードを落とす。
「・・・おい、大丈夫か?」
「・・・えっ、あ・・・はい」
あたしは気付かぬうちに俯いていたみたいだ。
「よし、帰るぞ」
「あっ、はい!」
外は寒かった。
なにより風が冷たくて、ヒューヒュー音を立てていた。
それが聞こえるほどにあたしたちは沈黙した。
「・・・なんか、不思議だな」
「え?」
「俺たち、出逢って2日で一緒に行動してんだぞ?お前は、何も思わないのか?」
「・・・」
何も思わないのか。
・・・いや、思わない訳じゃない。
でも、不思議・・・そういえばそうだ、という感じ。
「確かに・・・言われてみれば。」
まだあかの他人・・・と言われる関係だろう。
「・・・良かったぞ、今日。」
「何がです?」
「お前のこと、また一つ分かれた気がする」
「え?」
「・・・いや、何でもない」
分かれた気がする。
分かろうとしてくれてる?
あたしは少しの疑問と何とも言えない気持ちを感じた。