「・・・それに、さっきからお前は音楽一色だが・・・
デビューでもしたいのか?」

「ええ。」

「ええってお前・・・」


新堂さんはあからさまに驚いている。

まあ、驚かない方がおかしいのかもしれない。


「お前、よく恥ずかしくもなく言えるな・・・」

「恥ずかしい?・・・どうしてです?」


新堂さんは答えなかった。

わからないらしい。


「どうして夢を語ることが恥ずかしいなんて思うんですか?
人に語って恥ずかしい夢なんて、ひとつもない。
それに・・・人に語れないような夢なんて、一生叶わない」

「…!」


新堂さんは目を見開いていた。

あたしはただ、当たり前なことを言っただけなのだが。


「夢を追うことをいくらバカにされたって…“無謀だ”って言われたって…あたしは構わないんですよ」


そんなこと、いくらでもあった。

尚哉も、真吾も…きっとあったはずだ。

それでも付いて来てくれた。


「だって…
夢がないことの方が、
恥じるべきことでしょう?」


あたしはこの上ない笑顔を新堂さんに向ける。

新堂さんはハッと我に返り、急に早足になった。


「ちょっ…新堂さん!?」

「なんだ?…歩くのが遅いな。いくら胴長短足であろうと亀にもほどがある」

「はいはい。胴短長足が羨ましいですよっ」

「伸ばせ…足を」

「こっちだって伸ばせるもんなら伸ばしたいわ!」


あたしはできるだけバカにされないように大股でライブハウスに向かった。