「あれー?こっちで合ってると思ったのにー・・・!」

綺麗な桜の花が毎年咲き、大きな校庭では部活動に励む生徒達。

先生も良い人ばかりで生徒は文句一つ言った事がない。

誰もが夢みる素晴らしい学園生活が送れるという、有名な高校。【恵栄馨学園】

そんな高校に、やっとの思いで入る事が出来たんだ!

初日から遅れるなんてとんでもない事だって思うけど、道が分からないのはどうしようもない事だもん。

焦る事しか出来ない私は涙目になりながらもう一度地図を見直す。でも何度見ても分からない。

こんな事になるのなら、意地を張らずに車で送ってもらえば良かったと後悔するけどもう遅い。              

と、後ろから突然声が聞こえてきた。

「何してんの?君、恵栄馨学園の人・・・だよね?」

長身でスラリとした男の子が私の前に現れた。

「え、あ、うん!」

慌てて返事をして、言葉を続る。

「あの、道が分からなくなっちゃって・・・」

彼は微笑むと、私の腕を掴んで歩き始めた。

「えっ、ちょっ!」

突然の出来事に驚いて声を上げたけど、彼は気にせず口を開く。

「こうしてたら迷子にならないだろ?」

迷子と言わて、一気に子供扱いされているという感情が込み上げてきた。私は自分の手に絡みつく彼の手を離そうと試みた。でも全く離してくれる気配はなく、諦めるほか無かった。

「そーいや名前聞いて無かったな、俺は鈴村優翔って言うんだ。優翔って呼んで!お前は?」

「私は叶沢菜月。菜月でいいよ。」

太陽のような優翔の笑顔に目を反らす。


・・・何だか、胸がキューンってなった。