未来に向かって僕たちは【短編】

『じゃあ、もう切るね。おやす――』

「ちょっと待って!今どこにいんの?」

『病院の遊歩道にあるベンチだけど……』


「そんなとこにいたら寒いし危ないだろ!中入れって。俺、今からそっち行くし」

『えっ?そんな……いいよもう遅いし』


「行くっつったら行く!五分で行く!頼りないかもしれないけど、もっと俺のこと頼れよ!」


一瞬の沈黙の後、消えそうなかすれた声で、藤原が『ありがとう』と言った。


その『ありがとう』のひとことが嬉しくて、不謹慎にも口元が緩んだ。


俺は電話を切ると、急いでダウンジャケットを羽織り、

手に持っていた携帯電話をポケットに突っ込んで家を飛び出した。



--END--