仕事がある日はテレビをつけっぱなしにして、前日に作っておいた大量のご飯を机の上に置いて行けば問題はなかった。
 ナオはオレが帰ってくるまでずっと大人しくテレビを見ている。
 帰ったあと質問がたくさんあって困るけど、一つ一つ、わかる限り教えてあげた。
 テレビを見ているナオは可愛い。
 どんなものにも感動し、喜んでいる。
「ワタル、これは?」
「それは海老だ」
「えび?」
「水の中に住んでいる生き物だ」
 決して食べられるとは言わない。そんなこと言ったら食べたいと言い出すに違いない。
「えび、食べられるな。今度食べたい」
「え?」
 何でナオに海老が食べ物だってばれているんだ?
「ワタル、この人、いせえびがおいしいって、言ってた。えびといせえび一緒?」
 ナオは嬉しそうにグルメリポーターの顔を指差した。どうやらオレがいないときに料理番組で海老が出たらしい。
「いや、伊勢海老と海老は別、かな」
 オレはとりあえず嘘をついた。海老なんか買えるわけがない。ボーナスが出たら考えてもいいけど、今月は無理だ。
 今度から出かける前に料理番組のないチャンネルを選んでつけていくことにしなくてはいないなと思った。