「ナオはお金持ってないじゃないか」
 そう言うとナオが悔しそうな顔をした。
「ぐっ……」
「プリンだったら食べさせてあげるからいつもの買いにいくよ」
 そう言うとようやくナオは大人しくついてきた。
 いつものプリンとは三個で百円の安いプリンだ。ナオはプリンが好きみたいだ。
 最初はナオが何を食べられるのかわからなかったから、とりあえず自分で何食べたいか選ばせた。そしたらプリンを選んだ。プリンをつかんでその場で食べようとするからその時お金について説明したのだ。お金と物を交換しなくては食べられないと。
 それでもお金なんか使ったことないナオは何度か未払いの商品を口にしようとした。その度に説明して、ようやく買い物の仕組みを理解してくれたようだった。
 そしてナオが人間の食べ物はほとんど食べられることがわかった。しかも大食いなのだ。
 ナオが住むところがないと言うのでほっとくわけにもいかず一緒に暮らすことになったが、それからというもの出費が激しい。給料の半分は食費に消えているのではないだろうか。毎月家賃が払えるかドキドキするほどナオはよく食べる。高級食材なんか買っていられない。野菜や肉は賞味期限間近の値引きされているものを選ぶようになった。ナオには安くて量のあるものを食べさせるしかない。
 味についてはそれほどうるさくないので食材が多少悪くてもナオは気にしていないようだった。
 こんなことなら一人暮らしなどしなければよかった。
 まぁ、今さら後悔しても遅い。実家を出たのは就職してからだからもう三年も前のことだ。