休みの日の買い物ではいつも戦っていた。
 オレは少しだけ家計を守る主婦の気持ちがわかるようになったと思う。お菓子を買いたがる子供をなだめている親を見ると思わず心の中で頑張れと応援してしまう。
「ワタル、これ何だ?」
 袖を引っ張られナオの方へ振り向く。ナオが嬉しそうに指差しているのはメロンだった。
「それはな、ナオみたいなチビには毒なんだぞ?」
 メロンなんか買いに来たのではない。絶対買わない。何があっても買わない。
 オレは目当ての大根をカゴに突っ込んで青果のコーナーを後にしようとしたが、ナオが駄々をこねる。
「ナオはちびじゃないから大丈夫だ」
 一四〇センチないであろう背丈でチビじゃないと言われても説得力がない。
「人間じゃない子には毒だ。諦めろ」
「ワタルはそう言ってこの前のも食べさせてくれなかった」
 この前のとはマンゴーのことだろう。マンゴーを使った商品がいっぱいあるから安いかと思ったら二千円もした。大して大きくないくせに。高級ってシールがついていたけど、マンゴーがあんな高いとは知らなかった。
 メロンを食べさせろと駄々をこねるナオ。困った子供だ。仕方ない、言いたくはないけど最終手段だ。