「……が……」
「え?」
 少女が何かをつぶやいた。何て言ったのかはわからない。
「足りるわけねぇだろうがっ」
 今度ははっきり聞こえた。少女とは思えない低い声だった。
 少女はむくりと起き上がると、オレの手から引っ手繰るように飴をうばった。そしてそのまま袋ごと飴をガリガリと噛み砕いた。
 そんな少女を見て、何者なのだろうという疑問が頭の中いっぱいに広がった。
 当たり前の疑問だろう。
 目の前の少女は体の大きさから見て小学校低学年ぐらいの年だろう。
 肩までの長さに切り揃えられたストレートの黒髪を見て、オレはてっきり少女は日本人だと思っていた。
 細すぎる手足に白すぎる肌、右が藍色で左が金色の大きな瞳、とがった耳……
 少女は俺と同じ人間なのか?
「げ、人間」