「ワタル、えびいた」
「はいはい」
 ナオは鮮魚コーナーではしゃいでいた。
 今日は海老を買う約束をしていた。ボーナスの使い道は海老とメロン。それ以外はこれからゆっくり考えよう。
「ワタル、これは?」
 そう言ってナオは嬉しそうに蛸を指差している。
「蛸だよ。食べたいのか?」
「たこ? おいしい?」
「海老の方がおいしいぞ」
「じゃあたこは今度」
 ナオはそう言ってくるくると踊った。よっぽど海老を楽しみにしていたのだろう。
「転ぶなよ」
 そうナオの背中に声をかける。
「ナオは大人だから大丈夫だ」
 とナオは言う。確かに今ではちゃんと大人に見える。けど中身は子供のままだ。