目に飛び込んできた映像は衝撃的だった。
 道の真ん中に倒れている少女はぴくりとも動かない。もしかしたら死んでいるのかもしれない。
 そんな少女に対して何も反応せずせかせか歩いていく人の群れ。
 仮にもう手遅れだとしても誰か付き添ってやってもいいだろう。
 人の流れに逆らってオレは少女に駆け寄った。
「大丈夫か?」
 屈みこんでそう声をかけるが反応はない。
 うつ伏せに倒れているので表情がまったくわからない。血は出ていないので事故ではないようだ。もう一度呼びかけても反応がないので仕方なく少女の肩を軽く揺すった。
 すると、「ギュルルルッ」と言う音が少女のお腹から聞こえてきた。生きているみたいだった。
「……よかった」
 ひとまず安心だ。
 それにしても、まさかこの飽食の時代に飢えで倒れたのか? よく見れば少女は異常なまでに細い。
 虐待とかされているのだろうか……
 オレはポケットに手を突っ込み中から飴を取り出した。昨日同じ職場の稲垣が新商品の飴なのだとかでみんなに配っていた飴だ。
「これ、食べられるか?」
 飴を少女の顔に近づけてみる。