それからオレはナオと出会う前の日々をどう過ごしてきたか、必死になって考えてきた。
 どうして今まで一人暮らしなんてしてこられたのだろう。平気だったことが不思議なぐらいに、今はぼんやりとしか過ごせない。
 楽しいと感じることも少なくなった。それに比例して笑うことも少なくなった。反対に悲しいと思うことも少なくなった。
 要するに、何も感じないのだ。
 怒ることもなければ、喜ぶこともない。
 前まで好きだった芸能人も、今ではどうでもいい。前は雑誌に一ページでも載っていたら買っていたのに、今は雑誌をチェックすることすらしていない。
 好きだったパスタも、おいしいと思わなくなった。お気に入りのお店のお気に入りのメニューも、今ではどうでもいいし、食べに行く気がしない。
 やる気がない、というより、生きていく気がない。
 平凡な日々がただ流れていくだけだ。
 ナオは今どこで何をしているんだろう。
 違う星から来たナオが、一人で生きていけるだろうか。
「カタオカワタル」