ナオがペットと出かけてから、もう三日になる。
　どこかで事故にでもあったのではないかと思い警察に問い合わせたりもしたが、近くで事故はなかった。
　オレが出来ることといえばそれしかなかった。
　ナオのことをあまり知らなかったから、警察に行方不明で届け出ることは出来なかった。オレがはっきりと知っていることはナオという名前だけだと改めて思い知らされた。下手したらオレが誘拐の疑いで捕まるかもしれないし、ナオは日本人どころか人間じゃないかもしれなかった。
　第一ナオは自分で家を出て行った。
　もしかしたら、ナオはもう帰ってこないかもしれないと心のどこかで思っていた。
「ワタル……」
　だから、会社からの帰り道で聞こえてきた声は幻聴かと思った。
「ナオ？」
　オレは聞き覚えのある声がする方へ振り返った。
「ナオ……どこ行ってたんだよ」
　声が震えた。視線の先にはナオがいた。本物だ。ナオが帰ってきた。それだけのことなのに、嬉しかった。