「嘘だ! なんでそんな見え透いた嘘吐くの?
僕、知ってんだよ?
先生、あの男に乱暴されてるだろ?
ねぇ先生、お願いだ、目を覚まして」
私の頬を両手で挟み込むように包んで、赤根くんは悲痛なほど苦しげに言う。
けれど、赤根くんの言っている意味がさっぱりわからない。
私がりっくんに乱暴されるなんて、そんなことあるはずがない、有り得ない。
「赤根くんこそ目を覚まして!」
叫ぶように言って、赤根くんの胸を両手で思い切り押して突き放した。
すぐにその手首を捉えられ、グイと荒っぽく引き寄せられた。
怯えながらも見上げれば、赤根くんは冷たい無表情で私を見下ろしている。
腕に力を込めて必死で振り解こうとしたけれど、びくともしない。
女の私の力なんかが、男のそれに適う訳がないのだ、当然だ。



