思わず、突き放すような言葉が口を衝いて出てしまった。
とても正気とは思えない赤根くんの異常な思考に、心も、身体までもが激しく拒否反応を起こした。
「先生……どうしてわからないの?
あんな野蛮な男、先生にふさわしい訳がない」
ああそうか、あの演奏会はりっくんも見に来てくれて。
そして、演奏を終えた私にりっくんがプロポーズをしてくれた。
それをどこかから赤根くんは見ていたのかもしれない。
「彼のこと、何も知らないくせにそんな風に言わないで!
確かに――確かに彼、見た目は厳つくて怖そうだけど、でもすごく優しいよ?
自分のことよりも私なんかのことばっかり気にかけてくれて、心配して。
あんなに大らかで、心が広くて、優しい人、世界中探したってどこにも居ない。
私には彼しか居ない、彼じゃなきゃ駄目なの!」



