「え……あ…… で、でも……わた、わたしは、わたしには、婚約者が……」 「うん、知ってる」 穏やかに微笑んだまま、赤根くんはゆっくりと頷く。 「だから……」 言葉が巧く出て来ない。 私の方がずっと年上なのに、こっちは成人、向こうは未成年なのに。 全ては赤根くんの手中にあるような。 大の大人が完全に追い詰められ逃げ場を失って。 困惑しきって口籠ってしまった私を、満足げな薄い笑みを浮かべて見下ろし、そうして赤根くんは再び口を開く。 「だから……何?」