「わからない? 僕はピアノなんか弾きたくない。 ピアノなんて―― 大嫌いだ」 微かに眉根を寄せて、苦しげに吐き出した。 その憂いを滲ませた切なげな表情に、私の胸もキリキリと痛む。 「じゃあ赤根くんは……お母様に無理矢理やらされてるってこと?」 おずおずと尋ねれば、たちまちニヤリと不敵な笑みを見せる。 一体何なの? 「鈍いなぁ先生。 僕がレッスン受ける理由なんか、先生に会うために決まってんじゃん」