「あの、そういったお心遣いは……」
言葉を発した私をすれ違うように素通りし、ハインリーケさんはテーブルの脇に膝を落とした。
そうして、その上に御もてなしセットは並べられた。
「お気を使わせてすみません」
戸惑いながらも礼を言えば、彼女は振り返ってようやく私をその視界に入れる。
「あの、先生。
早くレッスン始めてくださらないかしら?」
向けられた冷ややかな視線は、憎しみまで含んでいるように映る。
「ええ、そうですね、すみま……」
「あんたこそレッスンの邪魔なんだよ。
さっさと出ていけ」
慌てて謝罪の言葉を口にした私を遮って、赤根くんが荒々しい声を上げた。
びっくりした。
どうして赤根くんが怒っているのか、さっぱりわからない。



