後を継ぐのが嫌なのかなって。 ふっとそんな事を想って切なくなった。 将来が決まっている、いわゆる敷かれたレールの上を歩むだけの人生なんて、窮屈でつまらないだろうと庶民の私は勝手に思ったり。 まぁ余計なお世話だろうけど。 「そうだよね、さすが」 わざとらしく微笑んで、当たり障りのない言葉を口にしたつもりだった。 けれど―― 「先生さえ望んでくれたら、次期社長の夫人になれるのに」 一瞬、何のことを言っているのかわからなかった。 でも、すぐに気付いた、気付いてしまった。