全部、私からだった。 ~AfterStory~



「は? 借りてるってどういう……
 はぁ?」


 目をパチクリさせて、まじまじと私を見る。

 すーっと視線を滑らせて、隣の寝室の更にその窓の外、ひらひらと風になびく洗濯物を目で指した。


「ちょっ、多恵、何やってんだよ?」

 目的の物をその中に見付けたらしいりっくんは、弾かれたように立ち上がると、タバコを指に挟んだままそちらへ向かおうとする。


「寝室は禁煙です」

 咄嗟にその腕を捕まえて引き留めた。


「ああ、そうですか、すみません――
 ――じゃねぇだろ?」

「お願い、しばらく貸しといて」

 縋る思いで見上げて言えば、

「貸しといてっていつまで?
 それまであれ、ずっとあのまま?」

 大袈裟なぐらい目を見開いて、りっくんは聞き返す。