駅から自宅までの距離、徒歩10分。
仕事帰りはいつも、一般家庭が夕食を終え一段落ついた21時頃だ。
この辺りは田舎の住宅街だから、人通りも車の通りもほとんどない。
若い女性の一人歩きが危険だなんて、今まで思ったこともないけれど、今日はどこか不穏な空気を感じて背筋がゾワゾワと震えた。
何故なら――
私の足音以外にもう一つの足音。
それはまるで輪唱でも唄っているかのように追いかけてくる。
付けられている? どうして私が?
でも、そうとしか思えない。
ピタと歩を止めて振り返ってみる。
確かに人の気配はあるのに、誰も居ない。
益々気持ち悪い。
正体不明の『何か』、目的も何もわからない。
だから一層、恐怖を煽る。



