こういう時の赤根くんは、とても高校生だとは信じ難いほどの危険な香りを部屋一杯に漂わせる。
だから苦手だ。
益々、単純明快なりっくんが恋しくなる。
ああ、会いたいなぁ、りっくんに……
「平澤先生?」
呼ばれてハッと我に返った。
レッスン中にまでりっくんのことを考えてしまうなんて。
りっくん欠乏症の悪化が著しい。
これは深刻な問題だ、嫌になる。
赤根くんは不思議そうに私を見上げていた。
今度は担任教師を慕う小学生のような、透き通るほどに純真無垢な眼差し。
まるで百面相だ。参ったな。
醸し出す雰囲気が一瞬で180度変わる。
その度に大の大人の私が、どぎまぎしてしまう。



