全部、私からだった。 ~AfterStory~



 あれから一週間。
 りっくんは仕事が凄まじく忙しいようで、一度も会えずにいる。


 もう寂しくて寂しくて、泣きたいぐらいだ。
 りっくん欠乏症だ。


 刑事の仕事ってこんなにも忙しいものなの?

 公務員じゃない。所詮雇われじゃない。
 どうにもこうにも納得できない、不満は積もるばかり。



 そして今日は赤根くんのレッスンがある木曜日だ。

 何となく気が重い。
 教えられることなんて、本当に何もないのだから当然だ。



 ショパンのエチュード4番をサラリと弾き終えた赤根くんは、椅子に腰掛けたまま隣に立つ私をゆっくりと見上げた。

 何故か憂いを滲ませているその顔は、得体の知れない色気があって私の胸の奥がザワザワ騒ぐ。