ドクン――
私の心臓が意味もなく跳ねた。
急に、何?
「多恵、愛してる。
無事で本当に良かった」
丁度赤信号で車を停車させたりっくんは、顔ごとこちらに向けて真っ直ぐに私を見詰め、丁寧に、とても大切そうに愛の言葉を口にする。
酷く在り来たりの、つまんないセリフ。
でもりっくんが言うと、極上の殺し文句に聞こえるから不思議だ。
りっくんは私の気持ちなんか、全部お見通しで。
望んでいることも、もちろん悩みや不安も全部。
私の考えていることなんか全てわかった上で、こうして欲しい物だけを余すことなく惜しみなく私にくれるりっくん。
りっくん以上の男の人なんて、この世に存在する訳がないんだ。



