「もう一つだけ教えて?」
不意に、赤根くんが沈黙を破った。
「『正々堂々と勝負』って、どうやるの?」
今正に殺そうとしている敵にアドバイスを求めるなんて、一体どういうつもりなんだ。
けれど、 赤根くんの表情は真剣そのものだ。
「元の先生と生徒の関係に戻れ。
多恵に、もう一度ピアノを教われ。
そこがお前のスタート地点だろ?
お前は色々とはしょり過ぎだ。
まぁ恋愛初心者には良くあることだけどな」
その口調には緊張感などまるで感じられず、それどころかりっくんは薄っすら微笑んでいる。
「バカにしてんのか?」
また赤根くんが大声で怒鳴り、銃を持つ手が怒りに震えた。
りっくん、どうして……
本当に殺されちゃうよ、嫌だよそんなの。



