無我夢中で訴えたけれど、りっくんは私の方など見向きもしない。
まるで聞こえてさえいないみたいに、赤根くんだけを真っ直ぐ見詰めている。
「最期に教えといてやるよ。
多恵に愛されたきゃ、多恵以上に多恵を愛せ。
多恵の幸せだけを考えろ、自分のことなんか、そんなもん二の次だ」
りっくんは遺言みたいなことを語り始める。
何これ? りっくんは本気なの?
本気で、赤根くんに殺されるつもりなの?
「それから、多恵は時々思ってもない強がり言ったりするから、そんな時はちゃんと見抜いてやれよ。
ひっどい寂しがり屋だ、あんまほっとくと拗ねるからな。
そいう時はここにキスだ」
言いながら自分の額を指差し、そして続けた。
「これの効果はまちまちだけど、一時しのぎにはなるかな」
何なの?
これ、私の取扱説明書みたいじゃない、ほんと何なの?



