「お茶入れるね」 弾むようなご機嫌な声音で言い、赤根くんは軽やかに、まるでステップを踏むような足取りでキッチンに向かう。 今だ、今しかない。 赤根くんの姿が見えなくなったと同時に、私はリビングの窓から外へと飛び出した。 幸いなことに、私は靴を履いたままだった。 走って走って走り続ければ、きっと山を抜けられる。 そうして道路にさえ出られれば、きっと―― きっと助かる。 けれど、ログハウスを出てすぐ、何者かに後から抱きすくめられた。