全部、私からだった。 ~AfterStory~



 身体を捩って赤根くんの手を振り払い、踵を返して走り出そうとした。
 けれど、すかさず腕を掴まれそれを阻止される。


「先生って、ほんっと分からず屋だなぁ。
 そういうところも可愛くて好きなんだけどね」

 恍惚とした表情で私を見詰めながら、悠長にそんなことを言う赤根くんは、やっぱりどこかおかしい。
 だから怖い。


 ここから逃げなくちゃ。
 もう頼れる人は誰も居ない、一人で何とかしなくちゃ。


「お願い、はな……して」

 恐怖に震える声で切に願えば、赤根くんはとうとう不快そうに顔を歪めた。


「先生、あんまり僕を困らせないでよ。
 もう二度と、あの地下倉庫に戻りたくないでしょ?」