全部、私からだった。 ~AfterStory~



 ふと思った。

 ハインリーケさんはどうやって地下室まで私を運んだのだろう? と。

 彼女はどんなに若く見積もっても40代後半だ。
 中年の女性一人で私を運ぶだなんて、そんなこと可能なの?

 何かがおかしい。



 思わず足を止めてしまった私を振り返って、

「先生、どうしたの?
 急がないとあの女が追ってくるよ?
 早くここから逃げよう」

 赤根くんはじれったそうに言って、私の手を引っ張り再び歩き出そうとする。

「ちょっ、ちょっとだけ待って」

 咄嗟に、繋いでいた手を振り解いた。


「そんな時間ないよ。
 先生、お願いだ、早く逃げよう。
 僕は先生を助けたい」

 切なげに私を見詰めて赤根くんは言う。