けれど、明るく照らされた階段を下りて来たのは――
赤根くんだった。
「先生!」
私を視界にとらえた赤根くんは、駆け寄って来てすぐ傍にストンと膝を落とした。
「怪我は?」
泣き出しそうな顔で心配そうに私の顔を覗き込む。
「してない、大丈夫」
首を左右に振って答えれば、「良かった」とホッとしたように笑顔を見せ、すぐに背後に回って、私の手首を拘束している縄を解いてくれた。
赤根くんは、愛し方やその表現方法が間違っている。
けれど、それだけのことで赤根くんの全てを疑い否定して。
私は最低だ。
自分の生徒を信じられないなんて、講師失格だ。



