全部、私からだった。 ~AfterStory~



 どうやら混入物はないようだ。
 ほんの少しだけ安堵する。


「わざわざドイツから取り寄せてる、私のお気に入りなの。
 お口に合うかしら?」

 言って、彼女はふふふと少女のように悪戯っぽく笑う。


「バニラチャイよ、とにかく飲んでみて。
 話はそれから」


 これを私が口にしない限り、話を進める気はないらしい。


 仕方なくカップを手に取り一口すすった。


 たちまち甘い香りが口の中にボワンと広がった。
 身体の中心がポカポカとしてきて、冷えきった指先までみるみる温まっていく気がする。


 『バニラチャイ』なんて、初めて聞く名だけれど、きっと私が知らないだけで有名なお茶なのだろう。

 うん、悪くない、とても美味しい。