見事なほどに流暢な日本語だ。
だから、違和感がある、全てがしっくりこない。
「いえ、私の方こそ……」
そこまで言って言葉に詰まっってしまう。
謝りに来たはずなのに、急にその気持ちが失せた。
申し訳ないなんて思っていない、被害者はむしろ私の方だ。
昨日、赤根くんが私に酷いことをしたんだ。
怒りがみるみる私の中で膨らんで。
謝りたくなんかない、と強く思った。
「いやあね、疑ってるの?
それなら――」
彼女は自分のカップと私のそれとを入れ替えた。
「これでどう?」
ほんの少し得意気に言い、そしうして満面の笑顔で頷いて見せた。



