「どうぞ」
とにこやかに勧められ、
「いえ、結構です」
と。
思わずそんな言葉が口を衝いて出て来た。
ここまで用意させておいて、今更何を言っているんだとも思うけど、何が混入されているかわかったもんじゃない。
睡眠薬か、はたまた毒薬か。
そんな私の心中を敏感に感じ取ったらしいハインリーケさんは、
「そんなに用心しなくても大丈夫よ。
今朝電話した時は、ちょっと感情的になってしまったけれど、今はただ、先生に謝りたくて。
昨日は聡一郎が先生にご迷惑をお掛けしたみたいで。
あの子、本当に我儘で困ってしまうわ。
自分の思い通りにいかないことがあると、すぐに癇癪おこして。
ごめんなさいね」
言って、はにかむような笑みを浮かべた。



