彼女が「ご苦労様」と声を掛けると、男は静かにコクリと頷き、すぐさま外へ出て行った。 二人きりになってしまい、どうしたら良いかわからず呆然と立ち尽くしていると、 「どうぞ、掛けて」 向かいのソファーを指しながら、ハインリーケさんは立ち上がった。 「今お茶入れるわね」 やけにご機嫌な調子でそう言うと、軽やかな足取りでキッチンへと消えた。 なんだか変だ、おかしい。 勧められるままソファーに腰を下ろしてはみたものの、気持ち悪い違和感のせいで、どうにも居心地が悪かった。