けれど、返事がない。
それどころか、家の中に人が居る気配すらない。
でもまぁ、これだけ頑丈に囲ってあったら、中の様子なんか透視能力でもなければわからないだろう、と勝手に納得して、もう一度小さなボタンを押した。
応答なし、ですか……
人を呼びつけておいて何だよっと。
誰も居ないと知った途端、強気になる単純な私。
はぁー、気を張って損したなぁなんて、強がり染みたことまで思ったり。
そして、心底ホッとした。
帰ろう、そう決めて軽やかに踵を返す。
と、プァーとクラクションを鳴らして右方向から漆黒のセダンが近づいて来た。



