主任は『私がこの世で最も苦手な人』と言っても過言ではないけれど。
赤根くん宅への往復の間、ずっと主任と一緒だなんて、きっと死にたくなるぐらい苦痛だろうけれど。
この際、そんな贅沢も言っていられない。
「主任も一緒に行ってください」
縋る思いで懇願した。
「甘えないでちょうだい。
奥様はあなた一人で来て欲しいとおっしゃってるの。
寛大なことに、こちらさえ誠意を見せれば、今回のことは目をつぶる、と言ってくださったのよ。
それにあなた――
自分のしでかしたことじゃない、自分でなんとかしようって気持ちはないわけ?
大の大人が、聞いて呆れるわね」
酷い言われようだ。
ちょっとだけ哀しくなってしまって、目の奥にじーんと重い痛みを感じた。
けれどそれ以上に、私一人が悪者みたいになっていることに驚いた。



